小中高生の自殺者数が深刻な増加傾向にある。過去3年連続で年間500人を超え、2024年は過去最多の529人にのぼった。なぜ子どもの自殺は増えているのか。
「コロナ禍で増えたと言われがちですが、実は以前から増加していました。2017年の座間事件以降、小中高生の自殺は顕著に増え、さらにコロナ禍で拍車がかかったのです」
自殺問題にくわしいフリージャーナリストの渋井哲也さんはこう話す。
警察庁や文科省の統計を見ても、特定の要因が突出して増えているわけではない。むしろ半数以上、年によっては6割以上が「原因不明」とされ、実態を十分に把握できていないのが現状だ。
●不適切な指導といじめ
渋井さんは、子どもの自殺が増える一因には「大人から子どもへの不適切な指導」や「子ども同士のいじめ」があると指摘する。
体罰は減少傾向にあるものの、子どもを追い詰めるような指導や、学校がいじめに対応しないことへのフラストレーションが子どもたちに蓄積しているという。
●単純に「9月が危険」とは言えない
夏休み明けの9月は、子どもの自殺が増える時期とされる。
「長期休暇を終えて学校に行かねばならないというストレス、あるいは生活リズムの変化がリスクを高めます。学校が居場所でない子にとっては負担が増しますし、家庭がつらい子にとっては休暇の終わりが逆に苦痛となる。変化のタイミングが危険なのです」(渋井さん)
ただし、地域差もある。夏休みが早く終わる東北や北海道では、ピークが9月1日以前に現れるとされ、単純に「9月が危険」とは言えないという。
●調査の不十分さと制度の限界
問題を複雑にしているのは、いじめ防止対策推進法の運用だ。
いじめの定義が広いため、学校側の対応が追いつかず、重大事態に指定されると調査に時間がかかり、逆に対応が停滞するケースもあるという。
さらに、文科省による自殺の背景調査は、学校教員が集めた資料をもとにしており、専門的な分析に耐えられないことが多い。
「調査委員会をつくっても、実施率は1割にも満たず、遺族に十分な説明がなされないまま時間だけが経過している」と渋井さんは語る。
●必要なのは「実態に迫る調査」
では、どんな改善が求められるのか。
渋井さんは「学校でおこなうアンケート調査を原則として必ず取る形に改めるべきだ」と提案する。現在の指針では「希望があれば実施」とされており、学校が隠そうと思えば隠せてしまうためだ。
「同級生や部活の仲間など、子どもの周囲は何が起きていたかを知っています。彼らの声を拾う仕組みを整えない限り、子どもの自殺の実態はつかめないでしょう」(渋井さん)