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ウーバーイーツ責任者「あくまでプラットフォーム」を強調 都労委で明かされた実態
2021年12月09日 17時07分
#日本の雇用と労働 #プラットフォームワーク

ウーバーイーツの配達員たちで作る「ウーバーイーツユニオン」が、ウーバーイーツの運営会社から、団体交渉を拒否されたとして、東京都労働委員会に救済申し立てをしている問題で、11月から審問がおこなわれている。

12月6日と9日には、ウーバーイーツ側の証人が立ち、ウーバーイーツについて「あくまでプラットフォーム上でユーザー(注文者、配達員、飲食店)間をマッチングさせる事業で、契約関係はユーザー間にある」「(運営会社として)配達の委託はしていない」と主張している。

ウーバーはグローバルなプラットフォーム企業であり、これまで情報開示がほとんどなされていなかったが、審問を通じて、実態が少しずつ見えてきた。(編集部:新志有裕)

ウーバーイーツの配達員たちで作る「ウーバーイーツユニオン」が、ウーバーイーツの運営会社から、団体交渉を拒否されたとして、東京都労働委員会に救済申し立てをしている問題で、11月から審問がおこなわれている。

12月6日と9日には、ウーバーイーツ側の証人が立ち、ウーバーイーツについて「あくまでプラットフォーム上でユーザー(注文者、配達員、飲食店)間をマッチングさせる事業で、契約関係はユーザー間にある」「(運営会社として)配達の委託はしていない」と主張している。

ウーバーはグローバルなプラットフォーム企業であり、これまで情報開示がほとんどなされていなかったが、審問を通じて、実態が少しずつ見えてきた。(編集部:新志有裕)

●労働組合法の「労働者」として認められるか

ウーバーイーツに代表される、プラットフォームを利用した個人による配達サービスや運転サービスなどは、プラットフォーム労働、クラウドワークなどと呼ばれ、法的な位置付けが、世界的に大きな問題になっている。

たとえば、イギリスでは就業者の区分が「被用者」、「労働者」、「自営業者」となっているが、ウーバーの配車サービスのドライバーについて、最高裁は今年2月、ウーバーが主張する「自営業者」ではなく、一定の権利が存在する「労働者」であると判断している。

日本では、ウーバーイーツの配達員は、労働基準法上の労働者としては扱われていないが、都労委の判断を通じて、労基法より幅広く認められる労働組合法上の労働者にあたるかどうかが注目されている。

基本的な判断要素は、「事業に不可欠な労働力として組み入れられているか」「労働条件や提供する労務の内容を一方的・定型的に決められているか」「報酬が労務供給に対する対価であるか」の3点とされている。

●配達を拒否すると「干される問題」を明確に否定

12月6日の審問では、ウーバー側の証人として、ウーバーイーツジャパンで、日本のオペレーションを担っている統括責任者が、5時間にわたり、通訳を介して、ウーバーの実態について証言した。

ウーバーイーツはあくまで「マッチングプラットフォーム」であり、ウーバーが提示する「推奨価格」をもとに、飲食店と配達員がマッチングする仕組みだと説明した。

この日の審問では、プラットフォームであることがしきりに強調され、記者の傍聴メモだけでも、プラットフォームという言葉が28回も登場していた。

統括責任者は、配達員にとって、アプリ上で提示された価格が低いということであれば、「競合サービスを利用するか、ほかのことをすればいい」と説明。アプリ上での配達リクエストを拒否することも無視することもできると主張している。

この点について、11月の審問で、ユニオン側の証人が、配達リクエストを何度も拒否していると、配達リクエストがこなくなる「干される問題」が発生すると指摘しているが、統括責任者は「キャンセル率が高い、低いは関係ない。マッチングサービスなので、時間帯やエリアを鑑みて、リクエストが送られる設定になっている」と明確に否定した。

「応答率の低い配達パートナーに注文が入らないと、プラットフォームの割り当てがよくないと思って、SNSに投稿したりする。人はSNSにネガティブなことを書き込む。だからこんな噂が出た」としている。

●開示されない配達料の計算方式は「私のチームだけが知っている」

ウーバーイーツをめぐっては、2021年5月から新料金体系が導入されて、これまで受取料金、受渡料金、距離料金といった形で明示されていた配達料が見えなくなったことに加えて、配達員への説明も不足しているとして、配達員たちから「ブラックボックスだ」と批判されている。

この点について、統括責任者は「基本料金、需給バランス、待ち時間、行先など、いろいろなファクターがあり、計算が複雑になっている。(配達員も)アプリの画面では、距離や時間、調整料金や推奨料金を見ることはできる」とした。

ユニオン側の代理人弁護士から、「1回の配達が350円トータルだとして、その計算根拠もわからないのか」と尋ねられると、「料金テーブルのようなものはないが、アルゴリズムにはアクセスできるし、逆算していけばもとの変数がわかるようになっている」「非常に複雑なもので、計算方法は私のチームだけが知っている。配達パートナーには開示していない」と語った。

●ローカル単位では「アルゴリズムを変えられない」

ほかには、日本での事業の実態や、意思決定の仕組みについての話も出た。日本では、「ウーバージャパン株式会社」と「ウーバーイーツジャパン合同会社」の2つの法人があり、日本のウーバーイーツ事業は、「2016年の開始以来、利益を生んでいない」という。

運営方針については、アメリカのウーバー・テクノロジーズ社の方針に左右されることもあり、配達員がアプリ上で、配達リクエストに応じるかどうかを意思表示するための時間制限が、60秒から30秒に短縮されたことについても、アメリカのグローバル製品チームからの助言を受けて決めたという。

時間制限については、一時的に30秒から15秒にまで短縮されたこともあったが、これもアメリカでのシステム変更によるものだったそうだ。

アルゴリズムの変更についても、アメリカのグローバル製品チームが担当するものであり、日本などのローカル単位では「若干の機能や設定を変えることは可能だが、一般的にはアルゴリズムは変えられない」と説明している。

●法務担当者「労組法ではない別の枠組みを探した方が良いのではないか」

12月9日の審問では、ウーバージャパン株式会社の法務担当者が証言した。

日本の法人について、ウーバージャパン株式会社が法務、広報、カスタマーサポート、マーケティング、政策渉外担当など、タクシー配車アプリとウーバーイーツに共通する業務を担当し、ウーバーイーツジャパン合同会社が、ウーバーイーツのオペレーションや加盟店獲得のためのセールスを担っていることを説明した。両社は資本関係にないが、いずれもアメリカのウーバー・テクノロジーズ社が親会社にあたるという。

法務担当者は、ウーバーイーツでは、配達員を介さずに、注文者が自ら飲食店に商品を取りに行くテイクアウトの形や、配達を飲食店自らが担う形もあることを説明。必ずしも配達員が全ての取引に関係するわけではないことを主張した。

また、配達員との利害関係の対立について、「労組法は古い規制だ。ウーバーイーツユニオンは配達パートナー(配達員)10万人の利益を代表しているわけではないだろう。真の解決になる別の枠組みを探した方が良いのではないか」と語った。

審問は12月27日にも開かれる。ユニオン側の代理人によると、都労委の判断は来年のゴールデンウィーク前後にも出る見通しだという。

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