7701.jpg
自民党派閥の「パーティー券」問題、法的に何が問題なのか?東京地検特捜部の動きは…論点整理
2023年12月14日 17時50分
#裏金

自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題が大きく取り沙汰されている。安倍派(清和政策研究会)所属の複数の閣僚が12月14日、辞表を提出したと報じられている。また、刑事告発を受けて、東京地検特捜部が議員の聴取を始めるともされている。

あらためて、今回のパーティー券収入ノルマ超過分のキックバック(環流)をめぐる法的な問題を整理したい。元東京地検検事の西山晴基弁護士は「大量逮捕」への発展もありえると指摘する。西山弁護士に聞いた。

自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題が大きく取り沙汰されている。安倍派(清和政策研究会)所属の複数の閣僚が12月14日、辞表を提出したと報じられている。また、刑事告発を受けて、東京地検特捜部が議員の聴取を始めるともされている。

あらためて、今回のパーティー券収入ノルマ超過分のキックバック(環流)をめぐる法的な問題を整理したい。元東京地検検事の西山晴基弁護士は「大量逮捕」への発展もありえると指摘する。西山弁護士に聞いた。

●法的に問題となるのは…争点は「共謀」の有無

——「裏金問題」をどのように捉えればよいでしょうか

法的に問題となるのは、パーティー券収入を得ること自体ではなく、収支報告書にパーティー券収入を記載しない行為です。

政治資金規正法は、収支報告書の作成・公表を求めることにより、政治資金の流れを国民の監視下に置き、政治資金が不正に利用されることを抑止しようとしています。

政治団体のパーティー券収入についても、収支報告書に記載することを義務付けています。もし虚偽の記載をすれば、5年以下の禁錮または100万円以下の罰金に処せられます。

——東京地検特捜部による安倍派議員の聴取とも報じられるなか、今後の展開は

過去の裁判例の多くは、収支報告書の作成者と議員との間に、虚偽の記載をすることについて「共謀」があったかどうかが争われています。

特捜部としては、今回のケースにおいても、まず、議員との「共謀」の有無が争点になるだろうと考え、関係者への事情聴取と証拠固めを進めると思われます。

「共謀」の立証においては、関係者の証言が重要な証拠になります。口裏合わせや口封じなどの罪証隠滅がされるおそれがあるため、大規模な逮捕事件に発展する可能性もあります。

●法の抜け穴が利用される可能性も

——キックバックについてはどうでしょうか

今回の問題では、ノルマ超過分のキックバックの法的性質が争われる可能性もあります。

政治資金規正法は、個人や企業・団体から政治家個人に寄付することを禁じていますが、例外として、政党から政治家個人に寄付することは認めています。

ところが、このような寄付金(政策活動費)について、政党側は収支報告書に記載して公表しなければならないとされていますが、受け取った議員側には報告義務を明示的には課していません。

政策活動費の扱いについては、これまでにも「法の抜け穴」として問題視されてきました。

今回の問題では、政治団体のパーティー券収入であるにもかかわらず、政党から議員個人にされた寄付であるとして「法の抜け穴」を利用すること、つまり「議員側は記載する必要がない」という弁解によって、法的責任が争われる可能性も否定できません。

●議員たちの"思惑"とは何か

——東京地検特捜部が狙う「本丸」は?

加えて、今回の問題の本質は、記載されていない金が、誰から受け取ったものなのか、特定の者からどれくらいの金額を受け取ったのか、どのように使われたのかといった一連の金の流れを隠蔽しようとしていたのでないかという点にあります。

政治資金規正法は、同一の者からのパーティー券収入が20万円を超える場合、その者の氏名等も記載することを求めており、さらには、同一の者から150万円を超えるパーティー券収入を得ることを禁止し、特定の者との癒着を抑止しようとしています。

また、同法は、支出について、収支報告書への記載に加え、領収書等の提出も求めることで、政治資金の適正な運用を守らせようとしています。

これらを記載しないということには、裏を返せば、次のような思惑があったのではという疑いが生じます。

・収入を隠匿したい
・誰からどれくらいの収入を得たのか知られたくない
・その収入をどのように使ったか知られたくない

特捜部としては、単に収支報告書不記載の刑事責任を追及するだけではないでしょう。

真相解明のため、政治家と特定の人物・企業・団体との癒着や、政治資金の不正利用の疑いといったさまざまな観点から、実態は違法な金銭収受であるが、それをパーティー券収入に偽装しようとしたのではないか、パーティー券収入をさらなる違法行為に利用していたのではないかなどといった点まで、捜査のメスを広げる狙いもあるのではないかと思われます。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る