8126.jpg
正社員の2倍、社員食堂のランチ代560円を"強制徴収"されるハケン社員の嘆き「お昼は食べないライフスタイルなのに…」
2024年03月17日 10時40分

ある派遣社員の男性から「派遣先で昼食代を強制的に取られる」という相談が弁護士ドットコムニュースのLINEに届いた。

男性によると、派遣先には社員食堂があり、そこでのランチ代として出勤1日あたり560円を必ず取られるという。これは派遣社員の金額で、正社員に対する徴収額は「半額の280円」だそうだ。

男性は昔から昼食を食べないライフスタイル。「昼食は不要です。食べないのに昼食代を徴収されるのはおかしい」として払いたくない旨を伝えたものの、会社側は「みんな要らなくても昼食代は払っている」の一点張りで応じてくれなかったという。

「半額の280円なら、ありえなくもない話ですが、560円は結構な金額です。1カ月で1万1000円も払って、食べたくもない昼食をとらされています。選択の余地がないのも納得できません」(男性)

法的に問題はないのだろうか。職場のトラブルにくわしい山田長正弁護士に聞いた。

ある派遣社員の男性から「派遣先で昼食代を強制的に取られる」という相談が弁護士ドットコムニュースのLINEに届いた。

男性によると、派遣先には社員食堂があり、そこでのランチ代として出勤1日あたり560円を必ず取られるという。これは派遣社員の金額で、正社員に対する徴収額は「半額の280円」だそうだ。

男性は昔から昼食を食べないライフスタイル。「昼食は不要です。食べないのに昼食代を徴収されるのはおかしい」として払いたくない旨を伝えたものの、会社側は「みんな要らなくても昼食代は払っている」の一点張りで応じてくれなかったという。

「半額の280円なら、ありえなくもない話ですが、560円は結構な金額です。1カ月で1万1000円も払って、食べたくもない昼食をとらされています。選択の余地がないのも納得できません」(男性)

法的に問題はないのだろうか。職場のトラブルにくわしい山田長正弁護士に聞いた。

●「法的な根拠なく会社が利益を得ていると考えられる」【弁護士の解説】

——「昼食を食べない」社員に対して、出勤すると昼食代(社員食堂の利用に限る)を徴収することに、法的な問題は考えられるでしょうか

食堂を利用しないのであれば、食事代もいらないはずですが、それにもかかわらず食事代と称して一定額を控除することは、法的な根拠なく会社が利得を得ていると評価されうるものです。

このような制度設計の理由は不明ですが、社員食堂の利用履歴を従業員ごとに管理するのが煩雑だという理由も考えられます。そうであっても、食券発券機の設置などの方法によって解決を図るべきであり、社員食堂を利用しない人に不利益を課すべきではありません。

なお、賃金から一方的に控除される方法で昼食代を強制的に徴収されている可能性もあります。

この点、税金・社会保険料などの法律で控除が認められているもの以外を賃金から控除する場合は、労働者の過半数を組織する労働組合か、あるいは労働組合がなければ労働者の過半数を代表する労働者との間で、書面の控除協定が必要です(労働基準法第24条)。

したがって、今回のような食事代は法律で控除が認められているものではありません。この観点からも、派遣元会社側が労働者側と控除協定を締結していなければ、一方的な給与からの天引きとして違法となります。

●基本的には派遣と正社員との間で不合理な差をつけてはいけない

——正社員と派遣社員で昼食代に2倍もの差がつけられていることは問題ですか

今回の派遣社員について、業務内容や責任の程度等の内容を踏まえて、派遣先会社の正社員 との間に不合理と認められる差を設けてはならないという考え方が法律に規定されています。この点、派遣先会社の正社員とまったく同一の職務内容や責任の大きさでなくても構いません。

そのため、食事代の補助に関する取り扱いも、正社員と同等の運用をおこなうべき場合もあり得ます。

なお、派遣社員の待遇決定には2種類の方式が存在します。

(1)派遣先均等・均衡方式
(2)労使協定方式

(1)については、派遣元が派遣先から提供を受けた情報をもとに、「派遣先の正社員の待遇に合わせる」という考え方を踏まえて派遣社員の待遇を決定します。

そのうえで、原則的に、派遣元事業主は、派遣労働者にも、派遣先に雇用される通常の労働 者と同一の食事代の補助をしなければならないこととなります。

(2)については、派遣元が、過半数労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結し、それを順守している場合、例外的に、派遣社員の労働条件はその労使協定により決定しますが、(1)のような「派遣先の待遇に合わせる」考え方は当てはまりません。

そのうえで、今回のような食事代の補助、すなわち食事手当という賃金未払いのケースでは 、派遣先の事業所が所在する地域において、派遣社員が従事する業務と同じ種類の業務をしている、一般労働者の平均的な賃金を参考にして決められます。

また、労使協定において派遣社員の賃金を定める場合、この一般労働者の平均的な賃金と同等以上の水準としなければなりません。

以上のことから、上記(1)(2)のどちらのパターンであっても、派遣元会社へ待遇の改善をご相談してみてはいかがでしょうか。

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る