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「星の王子さま」コラボ商品、権利侵害の批判受け2日で販売終了…本当に法的問題はあった?
2018年08月12日 14時35分

サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』とコラボレーションした商品「『星の王子さま』バオバブの苗木」が8月11日、発売からたった2日で販売終了となった。

この商品は、東京・銀座のソニービル跡地に8月9日、オープンした商業施設「Ginza Sony Park」(銀座ソニーパーク)で1000個限定販売される予定だったが、原作ファンなどからの批判がメールや電話で寄せられたという。銀座ソニーパークの公式サイトでは、『星の王子さま』の長年のファンの皆様の心情を考慮」したとしている。

もともとこの商品は、銀座ソニーパークに出店した「日本緑化企画株式会社」が、プラントハンターとして知られる西畠清順氏率いる「そら植物園株式会社」とのタイアップで企画したものだった。

ところが、商品が発表された直後から、原作ファンや以前から西畠氏の活動を懐疑的にみてきた人たちなどから、強い批判の声上がった。その一つが、「知的財産権」をめぐるもので、『星の王子さま』の著作権はすでに切れているが、イラストの権利や著作者人格権を侵害しているのではないか、というのだ。

本当に法的に問題があるのだろうか。福井健策弁護士に聞いた。

サン=テグジュペリの名作『星の王子さま』とコラボレーションした商品「『星の王子さま』バオバブの苗木」が8月11日、発売からたった2日で販売終了となった。

この商品は、東京・銀座のソニービル跡地に8月9日、オープンした商業施設「Ginza Sony Park」(銀座ソニーパーク)で1000個限定販売される予定だったが、原作ファンなどからの批判がメールや電話で寄せられたという。銀座ソニーパークの公式サイトでは、『星の王子さま』の長年のファンの皆様の心情を考慮」したとしている。

もともとこの商品は、銀座ソニーパークに出店した「日本緑化企画株式会社」が、プラントハンターとして知られる西畠清順氏率いる「そら植物園株式会社」とのタイアップで企画したものだった。

ところが、商品が発表された直後から、原作ファンや以前から西畠氏の活動を懐疑的にみてきた人たちなどから、強い批判の声上がった。その一つが、「知的財産権」をめぐるもので、『星の王子さま』の著作権はすでに切れているが、イラストの権利や著作者人格権を侵害しているのではないか、というのだ。

本当に法的に問題があるのだろうか。福井健策弁護士に聞いた。

●イラストも日本での著作権は切れているが…

『星の王子さま』の著作権が切れていれば、今回のようにバオバブの苗木を販売する上で、イラストの利用はできるのでしょうか?

「『星の王子さま』のイラストは、原作者のサン=テグジュペリ自身が描いたものです。よって、文章と同様に、日本での著作権は切れています。

正確には、サン=テグジュペリの死亡時である1944年の翌年から50年間に、彼は旧連合国民ですから『戦時加算』という追加期間で本作(1943年発表)の場合は9年ほどが加わり、2004年前後には日本での保護が切れたと考えられます。ですから、その後の新訳ブームでは許諾なく彼のイラストも利用された訳ですね。

ただ、今回のように作品名やイラストを商品パッケージに使うことはそれよりは微妙な問題があります。というのも、日本ではサン=テグジュペリ関連の団体が『Le Petit Prince/星の王子さま』の言葉やイラストを商標登録しているためですが、ただ、今回のような植物の苗を対象とした登録はないようですので、商標権の侵害もやや考えにくいところです」

●『星の王子さま』のイラストに別の人物を描き加えても問題はない?

今回の商品のパッケージには、『星の王子さま』のイラストに西畠氏自身と思われる人物が並び立つものもありました。こんな風にイラストに手を加えても問題ないのでしょうか?

「表紙のイラストには別な人物が加わるなど、確かに描きかえられていますね。この場合、著作者人格権のうちの『同一性保持権』(20条1項)などが問題になります。自分の意思に反して作品を改変されないという、著作者の権利です。

著作者人格権は一身専属的なものとされ、死後は原則として消滅します。ただし、著作権法60条という規定があり、死後も生きていたら著作者人格権の侵害となりそうな行為は禁じられています。もっとも、これによる差止請求などを行える存在は法律上限定されており、『配偶者、子、親、孫、祖父母、兄弟姉妹』までなのですね(116条1項)。例えば甥や姪は含まれません。

サン=テグジュペリに子供がいたという記録はないようですので、『星の王子さま』については仮に人格権の侵害にあたる行為があったとしても、差止請求権などを行使できる者はいないということになりそうです。

また、この『死後の人格権の保護』も、その後の社会事情の変動などに応じて次第に減少すると考えられています(116条ただし書き。ベルヌ条約の規定も参照)。仮に永久に同じレベルの保護なら、我々は歌舞伎や古典落語に基づく作品も作れず、シェイクスピアを翻案して映画や舞台を作った人は摘発されかねません。この点、著作権の保護期間と著作者人格権は直接関係ありませんが、著作権の切れた後の利用について人格権の侵害が認められた判決例は、ほとんど報告されていないようです」

今回の騒動をどのようにご覧になりますか?

「以上は権利面の解説ですが、法律論は法律論として、こうした商品企画の是非について広く社会的に論評することは自由でしょう。他方、弁理士の栗原潔先生は、商品には権利管理者の許諾を示すマークが見られるという指摘もされており(https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20180809-00092524/)、事実関係を把握した上での公正な議論が望まれますね」

(弁護士ドットコムニュース)

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