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ネットの「ヘイト表現」、被害者の負担大きすぎ…弁護士らが白熱議論
2018年12月16日 09時33分

国外出身者やその子孫をターゲットに、ネット上で繰り広げられる「ヘイト表現」。その問題点を議論するシンポジウム「インターネットとヘイトスピーチ」が12月12日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれた。

第二東京弁護士会が主催。被害者の代理人を務めた経験がある弁護士やヨーロッパ諸国のヘイトスピーチ対策に詳しい有識者らが、パネルディスカッションで意見を交わした。

国外出身者やその子孫をターゲットに、ネット上で繰り広げられる「ヘイト表現」。その問題点を議論するシンポジウム「インターネットとヘイトスピーチ」が12月12日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれた。

第二東京弁護士会が主催。被害者の代理人を務めた経験がある弁護士やヨーロッパ諸国のヘイトスピーチ対策に詳しい有識者らが、パネルディスカッションで意見を交わした。

●裁判のため、差別相手に住所教えることも

現状では、ネットに投稿されたヘイトスピーチの削除や損害賠償を求める手続きには、発信者情報の特定など数段階のハードルがあり、さらには海外企業が絡むこともあって裁判にかかる時間も短くない。被害者の負担がとりわけ大きいことが問題とされている。

被害者の代理人を務めたことがある師岡康子弁護士は「毎日行われるヘイトスピーチに対処するには本人が裁判をやらないといけない。原則として削除しようと思ったら、本人が裁判しないといけない、まずそこがおかしい。

本来、禁止し終了させる義務は国にあるのに、禁止規定もない。個人が負担を背負わないといけない。差別してくる相手に対して民事裁判を起こすには自分の住所を知らせることになり、負担が大きい。民事裁判は数年かかって、その間も攻撃を受ける」と話した。

●「プラットフォーム事業者は単なる管理人ではない」

ネットで不適切投稿を削除したり投稿者のアカウントを停止したりするために、各事業者が設けている「通報窓口」について、十分に機能しているのかという問題提起もされた。

京都大の曽我部真裕教授(憲法)は「ヘイトスピーチは他のものと比べて判断が難しい。どの程度の度合いであれば問題なのか、文脈が大事になる。ヘイトスピーチなのか、隣国の政策への批判なのかは判断が難しいことがある」と述べた。

龍谷大の金尚均教授(刑法)は、ドイツが対策に力を入れている点を紹介。「ドイツでは24時間以内の措置をするなど非常に迅速。そのためFacebookでは1200人の『ファクトチェッカー』を雇い、24時間体制で通報を受け付ける対応をしているようだ」と語った。

さらに、金教授は「プラットフォームの事業者は単なるアパートの管理人ではない。彼らは公の場を自ら提供し、公での発言を誘っている」とし、プラットフォームだからと言って責任を免れるのはおかしいという問題意識を示した。

●ヘイト、表現の自由の範疇か

「表現の自由」とヘイトスピーチとの関係についても意見が交わされた。

曽我部教授は「名誉毀損にしても児童ポルノにしても規制されているわけで、誰が見てもヘイトスピーチだというものを法律で規制するのは憲法違反ではないと思う。

ただ、規制をした時にハレーションも想定される。例えば移民政策に対する批判とか、隣国の外交政策への批判が抑制されると問題。そういうものが抑制されないような規制のあり方が必要ではないか」と話した。そのうえで、表現の自由との関係で、難しい問題だとした。

金教授は「ヘイトスピーチは同じく住んでいる人に対して、同じ人間じゃないというメッセージを送ることで、攻撃を正当化する社会ができてしまう。そのような差別表現が、表現の自由の範疇におさまるのか、考えないといけない」と述べた。

パネルディスカッションのコーディネーターは、李春熙弁護士(第二東京弁護士会・人権擁護委員会委員)が務めた。

(弁護士ドットコムニュース)

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